例えば、君もだ
竜門勇気


僕は冬が好き
すきな服を好きなだけ着れる
厚着の着ぶくれの薄汚い男であれる時間を大事にしたいんだ
二日酔いで頭が膨れて死にそうな気分で
場違いなデパートの酒屋をぐるぐる回る
最後に飲む一杯を想像して

昔見たんだ
だから知ってる
寒いときでも薄着のほうが
ずっと洒落てて
いいことなんだって
だからあんなに薄くて暖かい肌着が売れてるんだろ?
でも僕は知ってる
本当に寒いときは
本当の寒さの中に行くときには
分厚くて重たいものしか信じちゃダメなんだ

時代遅れをこねくり回して
作った最先端のみんなが使ってる優しいまがい物
百年持たなくていい
僕が死ぬまでそばにいる何かを探している
僕が死ぬまでは持ちそうなものばかり買っている
貰っている 探している 惜しんでいる
暖かくてボロボロになった全てを愛してるよ
例えば、君もだ

すり減りながら見る世界が
暗く見える目ならいらない
火花をちらして砕ける強さが
報われない心ならいらない

弱さのせいで失くなる未来なら
もう間に合ってる
そいつを僕は過去と呼ぶことに決めたから
みんなそうすればいい
もう負けを認めるのも
別の場所へ行くことを逃げると名付けるのも
やめればいい
僕はここで暖かくてボロボロの全てと居ることにする
疲れたままで 時代遅れで そんな全てが素晴らしいんだ
例えば、君もだ


自由詩 例えば、君もだ Copyright 竜門勇気 2017-11-05 23:40:52
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