たまごあえ
藤鈴呼


物を知らないと言うことは
恥ずかしいことだと思いなさい
人の心を思いやると言うことよりも
重大な過失だと信じなさい

十代の頃
硝子のハートを抱えた僕は
そんな台詞に
一喜一憂したもんだ

お父さんの言うことは絶対です
お母さんの言うことは最もです
じゃあ 一体どちらが 豪いんですか

ほんわか雲に包まれて
何処までも昇ろうか
底が天国だったなら
鍋の蓋を 御玉で綴じて 卵和え

出汁が効いていないとね
美味しくないみたいなんです
昔あったでしょう?
色は味噌汁なのに 
味わいがコ足りないの
何か 親近感が湧くのは
何でなんでしょうね

枠に囲まれて 船は行く
ここから先は 落ちる危険性がありますから
ぎゅっと抱き合ってくださいと
卵たちに告げる
ゆで卵だった過去のたまごも
卵焼きだった過去のたまごも
みんな 一斉に 空洞を通る

御玉の真ん中を
一斉に通り抜けて
楽しげな たまごとじと なる

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自由詩 たまごあえ Copyright 藤鈴呼 2017-10-13 11:07:58
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