夜明けの部屋と国道
宮木理人

夜明けが近い窓の奥から
規則的に響き渡る金属音
その音に感化させられるように
横たわる体の関節の隙間から
浮かびあがった
記憶の断片たちが
顔を見合わせる

記憶の端に火が灯り
ぼんやりと照らされた暗部は
未経験の過去の映像でした


冷蔵庫の低音
暗闇の沈殿
電子レンジと炊飯器が
互いに会話をするように
デジタル表記の液晶を
点滅させています


まだ誰も車を走らせていない
夜明けの国道では
亡霊のようなバイクの集団が
無音で走り抜けていて
信号無視をした瞬間
ひとり残らず
線香花火のように消えてしまった

その映像が何処にも記録されていないことをいいことに
アスファルトは夜の冷たさを忘れて、
陽を浴びて、温かくなる






自由詩 夜明けの部屋と国道 Copyright 宮木理人 2017-09-14 01:39:55
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