寒雪

もうすぐ
水が冷たくなる
残暑が喧しい
気怠い午後
川の畔に佇み
いつまでも
変わり続けている
柔らかな水面を
見下ろしている
思い立って
浅瀬にしゃがみ
右手を突っ込んで
手に触れた
手頃な大きさの
石を掴んで
目の前に
引き上げてみせる
その石は
くすんではいるが
なんだか妙に滑らかで
手のひらに心地よく
その感触に
心が弾んでしまって
何度も何度も
撫でまわしてみる
だけれども
繰り返しているうちに
感触の滑らかさに
僕の心が
飽き飽きしてしまって
そのうち
意味も分からず
苛立ちを隠せなくなって
遂には
気に入ったはずの
その石を
自分の瞳に映らないよう
考えられる限り
遠くへ遠くへと
力一杯投げ捨てた
川の流れを
少しだけ妨げて
間の抜けた音と共に
石はまた
川の中に帰った
なんだかすっきりして
さっきまで
石があった手のひらを
見てみると
いつの間にかはわからないけど
小傷が一筋
それに気付くと同時に
湧き上がる痒みにも似た痛み
一瞬だけ僕の気持ちをかき乱した
その小傷が
なんだか嬉しくて
飽きることなく見つめている
ぼくの目の前を
川の流れはやっぱり
せわしなく通り過ぎて行った


自由詩Copyright 寒雪 2017-09-10 15:30:47
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