あおい満月

誰かが私の涙を見て笑っている。
それは優しさではなく、あたた
たかなオブラートで包んだ刃だ。
私にはどうしてこんなにもわか
るのだろう。それは私の母たち
が愛のない身体に流してきた雨
と同じ心が、私のなかに芽吹い
てしまったからなのか。私を笑
うものたちの声を引き裂くため
に私は爪を立てる。目の前を横
切る黒い風の背中に向かって。
黒い羽が落ちた。鴉が一羽、血
を流して死んでいる。私の爪は
どす黒い鴉の血でぬめりを帯び
ている。


自由詩Copyright あおい満月 2017-08-30 14:05:01
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