春夜彷徨
塔野夏子

桃いろをうつす銀 青をうつす銀
たちどころにいりまじり 夢心地

    息づく闇の何処かで
    黒髪の 解かれる気配

ほのかに 立ちまようのは
知らない花の香と
やわらかな水の 触れあう音色と

ほのかに うかびあがるのは
うち捨てられた廃墟か
はたまた 墓標の群れか

    ああこのたえまないあたたかい憂いが
    わたしをとめどなく さまよわせゆく

桃いろをうつす銀 青をうつす銀
たちどころにいりまじり 夢心地

    息づく闇の何処かで
    白い爪先の ゆらめく気配




自由詩 春夜彷徨 Copyright 塔野夏子 2005-03-11 23:47:18
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春のオブジェ
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