愛する人を無くしたのなら
雨の音

吐きそうなぐらいの愛おしさが
懐かしい記憶と一緒に込み上げてきた
もうあの人の顔も思い出せないのに
もういっそ死んでくれと思ってたのに

いつかの日々がヤニのようにこびりついている
いつかの日々を壊れたように夢で見ている
いつかの日々に何かを求めている
いつかの日々はこうして遺されている

最悪な気分だ
最高に幸せだった事しか覚えてなくて
どうすれば幸せになれるかなんて
今の所全く分かんないんだ

受け取るばかりだった幸せが
もらいすぎた砂糖菓子のように
僕の身体をじくじくと
病の方向へ引きずって行く

僕を構成する成分要素の中に
果たして本当に人としての
さいわいはあるのだろうか
果たしてあなたに与えるべき
さいわいはあるのだろうか

彼女が結婚をしたという事を何かで知った
僕は素直に祝福しながら
めちゃくちゃに犯してやりたいと思った事が
彼女の幸せを酷く壊してしまいたいと思った事が
今になって罰として襲い来るのか

これは告解か
それとも懺悔か

赦されたいと思いながら
汗をかいて飛び起きる自分は
何処までも人なのだとよく分かった

ああ
あの時僕は無くなるべきだったのだろう
あの時にこそ無くすべきだったのだろう

朗らかに笑いながら
僕は今日も人の言葉を聞いている
朗らかに笑いながら
僕は今日も人の事を思っている
朗らかに笑いながら
僕は今日も人の邪魔をしないよう願っている
朗らかに笑いながら
僕は今日も人の下を世話している

テンポ良く リズム良く
惰性のように 堕落のように
さあ生きよう さあ生きよう
さあ励もう さあ励もう

だって 愛する人を無くしたのだから



〜中原中也の詩を受けて〜


自由詩 愛する人を無くしたのなら Copyright 雨の音 2017-08-07 12:40:57
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