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伊藤 大樹

片思いには質量がある。
だから 好き という気持ちは
不変/普遍 なんです
と酔っ払いの男に云われました。

好きという気持ちを冷凍保存して
必要なときにとりだしてレンジで
チンするのです。
(でも私、恋愛はインスタントラ
ーメンではないと聞きました。)
豚骨スープの海におぼれて、愛に
渇ききった私は膨張する。私を水
攻めにしたのはいかにも独身で冴
えない感じの男でした。
水分をふくんでふやけた私の体を
男は三分たつ前に食べ始める。
ウルトラマンでも三分しか体力が
もたないんだそうです、
サイレンが鳴るまえに怪獣をやっ
つけなければウルトラマンは解雇
されます。

   *     *

好きという気持ちは位置エネルギーだ。
高ければ高いほど落ちたときの衝撃
が凄いでしょう?
物理学って恋愛の学問です。
私の時代では常識ですよ、好きの気持ちは距リ×時間です。

私が怪獣だったら、喧嘩するのにすぐ飽きて
ウルトラマンはだからついに私にトドメを刺せない。
私、争いごと嫌いなんです、って、渋谷の交
差点に人間の迷惑も知らずにねそべります。
ねそべって、たわいもない話を二人でして、ドーナツを食べます。そ
してそのうちに怪獣の私とウルトラマンとの間に愛が芽
生えるかもしれない、そんな濃密な三分間。

だから渋谷は、私の重さだけ地面がへこんでいる。









自由詩 3 minutes Copyright 伊藤 大樹 2017-07-25 17:04:36
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