渡された夜のこと
noman

薄暗い階段を上ると
ガラス戸の向こうは少しだけ
明るくなっているようだった
きっと貴重なものが入っているであろう鞄の
前に蹲る女の人
の名前はもう線で
消されているのだろうか

いい匂いのする菓子を
ビニール袋越しに見つめながら
席が空くのを待った
眼球を動かすことで視界に入る
ものはもうあまり信用できない

帰り道は
透明で活動的な線で上書き
されていた
見上げた先の窓に映る
無数の縦糸のせいで
足取りは少し重い


自由詩 渡された夜のこと Copyright noman 2017-07-09 19:25:10
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