スコール。どうか傘はささないで
倉科 然

積乱雲の真下は土砂降りで
私は一人そこに突っ立って

子供に戻りたいなんて馬鹿なことを夢想する

私はしばらく歩くと大きな大きな湖にたどり着く

道端には地蔵が佇んでいて

こちらをじっと見ている

車の牽引ロープ
色とりどりの薬
自殺願望
思い出

地蔵の目は私のナカを見透かして

しかし私なんて見ていない

私は湖に一歩ずつ足を踏み入れる
途中でいきなり深くなり足元をすくわれ
仰向けで湖面を内側から見た

大雨の水紋が無数の円を描いては消えた

ここが誰にも選ばれなかった私の天国
水中の温度に溶け出した私は散り散りに分散してゆく


自由詩 スコール。どうか傘はささないで Copyright 倉科 然 2017-07-06 06:11:51
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