イオンへの旅
斎藤秀雄

町の中
心は製
薬工場

町の北側
には日が
差さない

朝だけ
日が差す
小学校と役場

夕方だけ
日が差す
団地

団地の
人びと
が製薬
工場で
薬品を
つくる


工場
の南側
は日が差
す良い土地
ではなかった
だろうか あそ
こにはなにもない
よなあ そういえば
幼稚園があったな と
       君は思う


町の人びとは夕方
町のずっと南の方にある
イオンに買い物に行く

隣町からも来る

イオンはなんでも売っている

猫砂

牛乳

サンダル

売っている


こんなに
便利
なお店
を町のはじっこ
に置いておくの
はもったいない


町のまんなかには
セブンイレブン
が三軒もある
ついこないだ
まで四軒あった

けれどひとつなくなった



鮫が喰ったのだ



おそろしいことだ



町の人びとは
鮫におびえながら
国道を渋滞させ

イオンに集う

野菜を
買って
また
鮫のいる家庭へと旅立っていく

悼むことをやめ
ともにあらねばならない


自由詩 イオンへの旅 Copyright 斎藤秀雄 2017-06-22 00:45:27
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