やさしい鳥
つきのいし.

感じない掌の上に
鳴かない鳥が
人のように瞼を閉じる

冷たい雨の降る
コンクリートの上で
静かに眠りにつく
戯れるように
温度を残して





おかあさんが
前に似たようなことがあったと
話してくれた
体をさすったりしたけど
生き返らなかったと
庭の土の中に
埋めてあげたらしい





鳥がしんでたのを初めて見た
前に拾って帰った時は
ランドセルをしょっていた時で
道端に転がっているすずめを拾って
風呂場に持っていって洗い
じぶんの皮膚科の薬を塗ってあげたら
いきなり生き返って
格子から飛んでいった





鳥は
自由ばかりもなく飛んでいる
土の上だけで生きられたなら
羽は要らなかったかもしれない
曖昧な風に乗るのは
きつかったろう





大人になって
見つけた別の鳥は
汚れた屋上にいた
大きくて 黒くて
生きていたら怖いと思いながら
近づいたら怖くなくなった
雨に濡れた体は重たくて
手にとると
膨らんでいてやさしかった
優しい鳥だった






やっとずっと
土にいても
だいじょうぶになった

おかえりなさい

鳥であるまえに生まれた
おまえであるように



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自由詩 やさしい鳥 Copyright つきのいし. 2017-06-04 20:49:06
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