イニシエーション
キリコ

ここは たくさんの人たちで、 あふれかえって、あっというまに、 背中から なぎ倒されるんだった。 広場に、
キミはいない。わかっていたこと。
祝杯をかわすのは 性じゃないんだな。


僕ら 今日、年を重ねて
ようやく 十の位が つくのに。




少しづつ 読み進めた本。 顔をあげた。 立ちくらんだ。またたくまに 司書さんたち 集まってくる。 広場に 
君がいる。 支えてくれる、
たくさんの指の すきまから わたしは見ていた。


みんな無事、年を重ねて
十の位がようやく、つく。


つく。


、くっつく。


司書さんの うちの一人は 最近、よく 触れてくる。
あさってで 百の位になるのだという。
君が、階段をかけあがってくるのが、聞こえる。
たくさんの指の 半分が わたしから 引き上げる。





祝杯は なまぬるく 樽にみちていた。
なんだ。 いそがなくても たくさんあったんだな。
ぼくら 今日は主役なんだから いっぱいもらうよ。
ぼくら ようやくなんだから いっぱいもらうよ。




みんな無事、年を重ねて
順当に、位があがる。


あがる。


、かけあがる。


待ちかねていたらしい司書さんに 半分は取られてしまう。

読みかけていたページに 祝杯の飛沫が飛び散る。

キミに 渡した分は 中でももう一番なまぬるく

だから広場まで来れば良かったのに。と君は むくれている。


自由詩 イニシエーション Copyright キリコ 2017-03-18 14:28:01
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