暖かな食事
梓ゆい

言いたいことも言えぬまま
蓋を閉じた父の棺。

最後に触れた手に一輪の花を握らせて
また会いましょうね。と
母は呼びかけた。

悲しみの中
いつもと変わらぬリズムで時刻を告げる
柱時計
落ちていたねじをしまい込み
真新しい喪服を脱ぐ。

手を洗いうがいを終えて
一つ頂いた
大きな梅干しのおにぎり。
炊き立ての暖かさと空腹で
父の遺影を眺めて泣きながら食べた。



自由詩 暖かな食事 Copyright 梓ゆい 2017-03-17 07:59:29
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