春の眩暈
ジウ
木の芽時、
自律神経に訴えるささやかな頭痛とめまいで、
ベッドの上の絶望を味わう
ああ、たった今あたらしい事がはじまろうとしているのだな
蓄えた滋養をおなかの辺りに抱きかかえ、胎児の様に丸まっていた時間が
終ろうとしている事を、今まさにひとつ季節の死として感じ取っている
季節のうつろいに人は逆らえない、私もまたひとしく目覚めるのだろう
日ごと萌芽のかろい音が、ぽろんぽろんと弦の爪弾きの様に、
あたかも希望めいた弾むリズムで鳴り
彼方此方からあぶく立つのを、長くなった日照の元で聞いている
生命のはじまりのはる
たらの芽からにご毛が失われ、蕗の青さがまして薹がたつ
連翹の後に続いて
少しずつ桜の蕾が綻びだすと一際強い風が吹き抜けて
後には薄霞の青空が遠く 遠くひろがっていく
ああこのままいっそ、くらりと倒れてしまいたい
けれど、わたしは久々に靴を履き
とびきり美しいひかりの季節へと出かけていく
意識という輪郭を失くした心を此れから日ごと
粛々と研磨されてゆくのだ
繭が割れる 目覚める
此れを、憂鬱という