春の眩暈
ジウ

木の芽時、
自律神経に訴えるささやかな頭痛とめまいで、
ベッドの上の絶望を味わう

ああ、たった今あたらしい事がはじまろうとしているのだな

蓄えた滋養をおなかの辺りに抱きかかえ、胎児の様に丸まっていた時間が
終ろうとしている事を、今まさにひとつ季節の死として感じ取っている

季節のうつろいに人は逆らえない、私もまたひとしく目覚めるのだろう

日ごと萌芽のかろい音が、ぽろんぽろんと弦の爪弾きの様に、
あたかも希望めいた弾むリズムで鳴り 
彼方此方からあぶく立つのを、長くなった日照の元で聞いている

生命のはじまりのはる
たらの芽からにご毛が失われ、蕗の青さがまして薹がたつ
連翹の後に続いて
少しずつ桜の蕾が綻びだすと一際強い風が吹き抜けて 
後には薄霞の青空が遠く 遠くひろがっていく

ああこのままいっそ、くらりと倒れてしまいたい

けれど、わたしは久々に靴を履き
とびきり美しいひかりの季節へと出かけていく
意識という輪郭を失くした心を此れから日ごと
粛々と研磨されてゆくのだ
繭が割れる 目覚める

此れを、憂鬱という



自由詩 春の眩暈 Copyright ジウ 2017-03-01 03:34:03
notebook Home 戻る 未来