(流れていった言葉は私のものではなくて)
tomoaki.t


流れていった言葉は私のものではなくて
膿を出すための言葉
森をかたちづくる言葉とか
朱の消えた舌を乾す
砕けた縁石
残った物でつくり上げる
電話のコール音の中を歩く人
月が欠けるからだ
溶けたリボンを渡して
朝になるまで気温は下がるけど
月を誰もいない路地で 壊そう
期待も蔑みもいらない
夜とか朝とか
そのような移り変わりがあるだけ
事故で出会って
黒髪を絵の具にした
Enterを押す前の空白 いや
籠められた影
時間がずれた過去に
土中で雪が孵った
しろい寄生虫の川
目だけで眠っている
蓋を開けるほほえみ
色褪せた虫
生きた音
ビニール袋が口に入り込んで
ひとりでに弾ける音
から生まれた死んだ蟻
抱き枕を殴るコオロギたち
除いていく
生きながらにして忘れてやる
一人の夜



自由詩 (流れていった言葉は私のものではなくて) Copyright tomoaki.t 2017-02-04 16:47:18
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