金平糖
藤鈴呼


ゆっさ ゆっさと 揺れる竹
先に飾られた 幾つもの願い

海と陸とを繋ぐ 小路を抜けて
浪の花を そっと 眺めてる

かわいらしい こんぺいとう
あまい ちいさな つぶだから

犬歯で 噛み砕いたり
臼歯で 磨り潰したり しないようにって
注意を していたの

岸壁に 打ち寄せる
細かな形を 連想しながら
温かな部屋で 寛ぐ瞬間
ほんの少しの 罪悪感を 覚えます

それが 何に向けてで 有るのか
上手く 説明 出来るほど
想いは まとまって いないのだけれど

ちょっとした 瞬間に
ほろりと流れた涙を
冷たい 北風の所為にする
余裕くらいは あるみたい

箱を 開けるのが
何時だって 楽しみだった

ひな祭りの 季節には
ぼんぼりが お決まりで

あの ぽおとした 薄明りが
何て いじらしいのだろうと
幼心に 感じていた

手前に置かれた
平行四辺形は
とても 固くて

プラスチック製だから
余り 心を 奪われなかった 筈なのに

今では
箱の中に
あの 色合いを 見つけ出すと
嬉しくなって しまう

いつかの あられと 勘違い
白 桃 黄緑
この 三色だけで
生きて行ける 気がしていたの

だから
こんぺいとうの中に
黄色が 混ざっていた 瞬間は
本当に 狼狽えた

驚いて
口が開いて
止まらなかったけれど

その唇に 沿うように
甘い 金平糖のような 波の花が
転がり込んだから

全て 許されるような
錯覚を 憶えた

今だって 夢の中で
あの 刺々しいけれども
甘い 感触を
憶えているわ

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自由詩 金平糖 Copyright 藤鈴呼 2017-02-01 01:56:35
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