うみこ

夏の裏には
ドーナツ色の神様が転がっている
つきだす痛みは粒になってこぼれ、
いくつも束ねられた足音が、校舎の隅で鬼火になる
モルタル製の壁の隙間で、
待ち合わせが継続され、
薄青き者と薄赤き者の透明な抜け殻が、
濃ゆい日と陰に区切られてうつむいている

清らかな音が残す下足場の冷やい感覚
幽霊の覚書のような風

地面に張り付いた影が、砂金の輝きに眩んで侵食を起こす午後

抉れた山肌が、剥き出された赤土を濃ゆく引き締めているが
あの肌の緊張が緩むと降りてくる夜

その夜山間の家々に灯る窓の火の向う

たくさんのあなた方が、手を傘にしてこちらをのぞきこんでいるのがわかる
僕からは、校庭の向うに現れた何匹ものコオロギが、蛍色の星になるように見える

赤土を抉りすぎると血が出てくると脅かされて
深い穴を掘ることを禁止された僕は
膝を抱えてじっとそれをながめている

車椅子のあの子も
耳の悪かったあの子も

いる

裏返った夏の事象は
蝉の蛹のような形を成し
いたるところで土中に入り郷愁の叫びを育てる

やがて夏の裏から生まれ出た者たちが叫び始めると
たくさんのあなた方は少し悲しく少し懐かしい気持ちになる

そのうちいくつかの者が子供らに拾い上げられ
輝く宝物を見つけたような笑顔を手向けられる


自由詩Copyright うみこ 2017-01-30 05:00:12
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