風物詩
なけま、たへるよんう゛くを

/ふと妻の犬歯が目立った
怖々言うと、目を見張る
それから傾いで私を見やる
妻はかまいたちになって飛び出した


/軽く強い奏で隣で
希望の調べががなる真横で
口には火種が憑き物で
現実に甘いものの甘味がぐれてて
人は爆弾に告白したり告白を最後の爆弾にしたり
うまいとか不味いとかで食べた食事を日記の文面としてすげなく投げつけて袂を別つ
夢は思い出すと夢でなくなり思い出は思い出すにつけ夢見が勝り
瞳が人生より鈍り
肩に手を掛けたり
疲れが椅子に手を掛けさせたり
時に恩義を手に掛けたり
はたまた繋がりに開くもろ手は煤けていくのに相違ない
希望の謳歌が耳を突き
返す刀で胸を突き
甲虫の僕を指で突っつき
行く先々まで媚びり付いてて
希望の行軍歌 人は耳朶と火蓋を途切って落とされる
知らぬか知る間にも洒落たこうべさ

もしも終末が手を引いてくれたなら良くはならないんだけど
みなおんなじ踊りが出来る
死の舞踏会は代わり番こに順繰りにだから
なにも良くはならないけど
信ずる事そのもの妄言になりさえすれば
やっと要望とか 羨望とかも 構想とか追想とかも 揃ってゴールだよ

/七月某日祭りの辻に 浅黒日頃の毛を振り乱し なんにもならない真似勤しむに 擦れっ枯らして楽しみに あはつあははついやははは (身も透かせ気も尽かせ 一丁火加減騙くらかしな 世にも此くにも怪しき儀式が 坊ん、坊ん、焼けますよ 飛び移りますよ 会えますよ 太鼓の轟きピント張り 人まだ集いまだ流れ 坊ん、坊ん、踊らにゃ損 着飾れ混ざれ、身も攫え 気も晒せ)

/偏らないように震えている 場末や上座 飛んで速やかに出戻りあれは ほんの本分でもなかったと
/夜を徹し 之を征服す 雨戸閉め切り 昼も退けて こはいずこ 雨粒の音 今何時 明日の白昼夢 意識有り曜日に不明 起きてるの 意識去り用事に抗命 落ちてるの欄干 非干渉なる甘美も冷悧なる 無言も無言の信号なる
/明けて暮れる=休みなく染まり続ける

/豊かな街へと繰り出そう
軍資金が今以てあるといい
家にはなんにもなくていい
 空っぽで俺を迎えてくれ
/雨の只中赴く風呂屋 天の橋掛け明るくフロア 感動まかせに墜ちる太陽 今夜出掛けたら許さない
/キリンの背脂を奪った
羽虫擁する藪の中飛び
虎の門抜け屋敷の塀越え
鉄の作付け片付けて
一株睨めつけ唾飲んだ
朱い御身をもぎ取った!

/甘い露降り落ちる底冷やしの鎌
提供は事勿れ主義社
港は盛況遺骸に満つ
樽酒割っちゃその髄浴びる
そして祭壇に下りた褒賞には 本物になれなかった劣等どもの指紋が累々と 累々と要らない
/真人間ぶっちゃっても
鏡よ鏡は嘘が吐けない
奥じゃ自切した痕が火照る
お前のみが恥を知る

/鷹揚な悪女・風前の砦
華奢が大迷惑・錯覚土壌汚染
丁重で実のない処刑・乾き切った導火線
秘密裏の是認・告ぐ無き空言
収支の後釜・打ち水放課

/果肉の図式で内向いた
やいば予防線を切り裂いて
子守独り身 臙脂のがま口
弄ぶ声 聞き馴染む声
/焼き魚黙考
僕という人間は骨も食う
よく 分からないからである
喉を抜ける際ちっとも厄介にならない小骨と おお骨
太い骨はしかし、干物であれば賛同者が些か増えようと思われるが、丁寧に噛み潰すと、最早ここでいう小骨と同じものでしかなくなる。つまり、小骨が食えるのにおお骨を食わぬのは、よく分からぬ振舞いでしかない。留意されたいが、個人的な感想である
すると、尾っぽと、皮も食う
よく分からないから である
食えないものを売っている訳がないのだ
人間にも鱗や尻尾はあるのかもしれないが、身を切ってまで見知りたいとは思わない 自分の命の構成もよく分かろうとしない だから自分が何にも喩ええない
こいつにも背や腹がある 臓器がある 肌や軟骨がある そうは見えない
存分に食える餌が目の前にある。あくまでそう考える
だがよ
頭は食えない
脳が、食えるかどうか思案したこの脳が目の前にもまた一つ、抜きんでてさびれる 面突き合わせ目の前に目玉をギョロつかせる そして食う口までもがある
食え 食え 食えぬ
よく 分からない のかも
考え中である
僕という頭 鰯という頭
捨てて捨てて 残るなまくび
頭でっかち あとは無味
/月が真下に影を落として
雨上がりに這えないかたつむり
黒い宝珠に雲は割り入り
空き地に焼けた玉ねぎの香るのはなぜ
風に乗る迷い子が足許もなしに立つ瀬はいかにしてそこに在るか問おうと

/貴方方は知らないのでしょう
ここでは風は吹かない
そう語る子連れた顔は暗く拝めぬ
去る

/金額は不足の代償
額面は手数の継ぎ足し
工面して塞げる疼痛
欲求と工費の大小
疎かと繁りの光彩
厳かと騙りの積層
他愛もない百万羽の雅から 羽をもいだものの集合
銭の巡れる渦潮の巨万
潜り心地は最悪

/夜露階段
戦士の秋口
水が浮かんでるエマニエル
おも(白)みのない全天に
戦車の中のサラリマン
ひとりひとり揺れる
気にすらしないで3日漬け
蔓延る蔓は尖った苺
湿り気孕み津軽三味線
なんて怖いね
このういろう
夜登る階段よく見えやしないしるだくつゆだく夜露に塗れ
踊り場で振り返ること何べん目
ささくれてた古びた手すり

/見境への反感
自分自身と向き合えなんて
背筋を最大限伸ばせなんて
いじめっ子が考えた言葉さ
処刑人が使う慰みさ
だってあんたは
あんたはまだ
/数え百十九の少女
赤いルージュの口紅落とす
友達だった 君の咥えた
赤いルージュの口紅落とす
コップに媚びり付いた垢
洗いざらい 水に流す
艶色から プラスチック音から 台所洗剤の効き目から 白ちゃけた紅指し指から 硬水道水の匂い立ちから
人体の 味はしない

/夜が来て 夕陽とはぐれ 気付くのは
実りえた芽の 影もなき事
/煙たい悪寒の淀みに根差す 崩折れて傷んで花は花
軋む扉に手塩を掛けて 開けるに費やす自重の積もり
シャワーから夏が垂れて 君が二十歳に戻る寸暇に
先っちょの鋭い味付けで 僭越ながら根回し夜食を

/贈答品=くれて開ける
/飽き
カルシウム 食べてますか
健やか健やかしてますか
お宅の論理は安物揃い
昨日食べたのは鉄板でした
髪伸びた?かなり切った?
ハイオク安請け合い?廃屋やする気配?
美辞麗句?ビジネスライク?
毀損?吐きそう?かなり基礎?
やくそう?額装?なにを隠そう?
花束は起き抜けの海に放したら?
手間暇身勝手軽業師、伸びる魔の手はジャグリング

本当は友達なんて欲しくないんだ
お世辞にも対価も得たくないんだ
毎年毎年言ってんだ彼は
バグってんだオツム グズってんだ予知夢
それはそれはむかしむかしの 『いつの事だか 思い出してごらん』
むかし懐かし風物詩

毎年毎年訊きてえんだ
躓いてんのは
いつの歯車


/ああ待て狼
言いたい事が 作り置いた言葉が
山ほどあんだ 谷ほど深まったんだ
とっくに溢れた筈 なんだけど なんだったっけか
(炉端に灰が煌々と焼け付くのが見える 井戸水をかぶせ瞬いた間に)
出会ってからの妻との一切を忘れて木こりは
また一年の間
転機を保留される


自由詩 風物詩 Copyright なけま、たへるよんう゛くを 2017-01-22 12:15:52
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