微熱砂
小林螢太
空にはもう
手が届かない
真夜中、
潤いが消失した部屋で
繰り返し観たものは
果てしない砂漠での蜃気楼、の夢
瞳を覆う
色が無い眼鏡の、曇りをふき取っていく
余分なものが見えないように
(分かっていたんだ
黒点が浮いたバナナの
甘く発酵した退廃のように
単に、陳腐化する
だけ、だけ、だ、け、、、
*
砂
砂が、ちゅうに舞っている
錆びた身体の循環を再構築し
頭の中のノイズをフィルターにかける
誤解された比喩に恩赦を求めて、
(華やかな歓声/反転/暗転
わ、わたしは
全てが限られた、この矮小な花壇の中で
与えられた胞子を
気まぐれな雨しか降らなくとも
すべてに花を
咲かせたいだけだ、けだ、だ、、
(モノクロに斜陽した花園の中で立ち止まる
(闇のようで真っ黒な薔薇が傷を広げ、痛む
澄み切った奇跡の泉に浸かっていたい
傾いたものたちへ
寂れた公園の砂場で
その砂の、一粒一粒が
風に舞い、或いは乗って
空を目指すことを
あなたは馬鹿なことだと言うのですか?
夜が明けると、やがて砂は
雨に流され、濁流となって
河口へと流れていく
しかし
もうすでに
河は、無くなっている