鰤を振る光景
藤鈴呼


とろみをつけたくて
片栗粉を 探したけれど
こないだ 捨てたこと
思い出した

透明な タッパーに入れて
護りは 完璧な 筈だったのに

心の隙間に
ちょっとした恋が
埋まっている みたいに

そして その鯉が
少しずつ 濃度を増して
飛び跳ねる みたいにね

透け透けの シースルーが似合う夏には
細かった 腕も

少しずつ 筋肉質になって
逞しく 変わるよ

それは 妄想
だけど 泥沼に 足を
掬われないようにって
必死で 長靴を 探す

しゃぽしゃぽの雨だけならば
こんなにも 軽い歩幅が

轍に 挟まれて
ちょっと 苦しい

ブリブリした 君に
ちょっかい 出したくて

「さっき 食べたじゃん!」って
威張ってみたら

間違えた
数時間前に 焼いたのは
鯖だったの

サバサバと 行きたいね
ポニーテールが
似合うくらいの 角度で

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自由詩 鰤を振る光景 Copyright 藤鈴呼 2016-11-20 09:55:12
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