灯台
うみこ


君がめいっぱいタバコを吸って煙を吐いた
だけど、吐き出されたのは煙ではなく砂煙だった
僕は運動会でつむじ風が起きたときのことを思い出した
空は一瞬で濁って
口や目に砂が飛び込んできて、服の中へ入って、終わったあとでも髪の毛の隙間やら膝の間から落ちてくる。そんなつむじ風の起こす出来事を僕はとにかく息を止めてやり過ごすしかなかった。
つむじ風は好き放題校庭を遊びまわったあとで
設営テントを揺らして
颯爽と空へ消えるのだ
君がベランダでタバコをふかしているのを
僕は見ている
空は青々としていて
美しい世界に君が巻き起こすつむじ風が消えてゆく
僕にはやがて乾きが訪れる
とにかく僕はそれを感じている
風は南西にふいている
君が吐いた煙が教えてくれる
その方向を見ると
遠くで海が煌めいている
僕は目を細める
眩しく美しい世界に
君は違和感なく溶け込んでいる
前髪が琴線のように煌めいている
君がこちらを振り向く
けれどすぐにまた横顔に煙突に煙になる
(あるいは晴れた日の海の灯台)


















自由詩 灯台 Copyright うみこ 2016-11-20 03:08:00
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