翼と頬
木立 悟




足跡は沈み
足音は飛び
すぐそばを歩む風から
三つの異なる色を受けとる


手と足を失くした煉瓦色の天使の
翼と頬に抱きしめられて
夜の蔦の鈴は鳴り
白と金に土を照らす


高みを流れる息は降りて
たてがみの集まりの原を経て
火のなかの瞳を目覚めさせる


光の手紙が舞い上がり
光が光を読む音がして
手紙はゆっくり消えてゆく
まぶしさに微笑むものたちに
初毛の波は手わたされてゆく


じっと握られた手がひらき
滴の息が立ちのぼり
誰かにつながる歌になるとき
悲しみを悲しみと言わなくていい
光を光と言わなくていい
もう何も 言わなくていい


翼と頬が肩に触れ
ひとつふたつと瞳をつぶやき
三番めの言葉のくちびるから
花は鎖骨を流れ落ちる








自由詩 翼と頬 Copyright 木立 悟 2005-03-03 13:59:37
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