翼と頬
木立 悟
足跡は沈み
足音は飛び
すぐそばを歩む風から
三つの異なる色を受けとる
手と足を失くした煉瓦色の天使の
翼と頬に抱きしめられて
夜の蔦の鈴は鳴り
白と金に土を照らす
高みを流れる息は降りて
たてがみの集まりの原を経て
火のなかの瞳を目覚めさせる
光の手紙が舞い上がり
光が光を読む音がして
手紙はゆっくり消えてゆく
まぶしさに微笑むものたちに
初毛の波は手わたされてゆく
じっと握られた手がひらき
滴の息が立ちのぼり
誰かにつながる歌になるとき
悲しみを悲しみと言わなくていい
光を光と言わなくていい
もう何も 言わなくていい
翼と頬が肩に触れ
ひとつふたつと瞳をつぶやき
三番めの言葉のくちびるから
花は鎖骨を流れ落ちる