午後と秘名
木立 悟






花のなかの
蜘蛛の影を吸い
水の螺子を巻く指が
静かに空をまさぐっている


まだらな闇
居るはずのない家族との約束
ところどころ見えない階段
現われては消える粉の窓


二重に回る火の橋が
霧の径を照らしている
天球儀に記された
詳細不明の公転軌


刃金づくり 作業場の煙
曇ひとつない暮れの遅さ
薄まる反射
濁る蒼と黒


首をかしげ
足の裏より狭い場所を旋回する
羽を持たないかたちの速さ
かたちを持たない姫の微笑み


目をふせたままの昼から午後へ
踊るものたちはすぎてゆく
虹が虹に 隠された名を呼ぶ
繰り返し繰りかえし くりかえす




























自由詩 午後と秘名 Copyright 木立 悟 2016-11-08 09:21:45
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