薄衣
水菜

おままごとあそびです。
ゆみは、ちいさな手でジャッキーとクーピーのお弁当を作ります。


(幾枚もの薄衣を重ねて
血色の良い足が足首側を上にして
歩いている
生白い足の裏は足指や土踏まずを器用に動かしながら
会話をしている
さらさらした薄衣を頭から被っているために、傍目からは小さな人形のようだ
美恵子は、目を疑った
よくよく見れば話す足の裏の本体は、そばかすで小さな身体の由美子の仕業だった
足を器用に動かしながら、あ~でもない、こうでもないと床の上で紙に殴り書きをしている
由美子の奇行は、よくあることで慣れっこのつもりだった美恵子は、つくづく自分の認識が甘かったことを痛感した
足裏人形の舞台は、どうやらクライマックスを迎えたようだった
助手らしい右足裏のジャッキー(トラ猫)とマジシャンの左足裏のクーピー(男の子)が、口から数多くの苺ミルクキャンディを放出したところで幕を閉じる
最後に堂々とお辞儀までしてジャッキーとクーピーは、机の上の舞台から矢のように消えた
保育園での演し物で披露するらしい足裏芸
美恵子は、言葉も出なかった
由美子は、双子の美恵子の姿に気付くと、ぱっと起き上がった
染めてもいないのに栗毛色の癖っ毛には沢山の紙吹雪の残骸が絡まっている)

おままごとあそびです。
みえは、クーピーのお弁当だけ不出来で美味しくなさそうなので泣き出しています。

ジャッキー『青い紫陽花も入れて!僕ら大好物なんだよ』
クーピー『!ずるい!僕が先だよ!』

画用紙にクレヨンで大きく描かれたのであろう力作の彼等が少し歪んだ線そのままに喧嘩を始めました。

(幾枚もの薄衣を重ねて
血色の良い足が足首側を上にして
歩いている
生白い足の裏は足指や土踏まずを器用に動かしながら
会話をしている
さらさらした薄衣を頭から被っているために、傍目からは小さな人形のようだ
美恵子は、目を疑った
よくよく見れば話す足の裏の本体は、そばかすで小さな身体の由美子の仕業だった
足を器用に動かしながら、あ~でもない、こうでもないと床の上で紙に殴り書きをしている
由美子の奇行は、よくあることで慣れっこのつもりだった美恵子は、つくづく自分の認識が甘かったことを痛感した
足裏人形の舞台は、どうやらクライマックスを迎えたようだった
助手らしい右足裏のジャッキー(トラ猫)とマジシャンの左足裏のクーピー(男の子)が、口から数多くの苺ミルクキャンディを放出したところで幕を閉じる
最後に堂々とお辞儀までしてジャッキーとクーピーは、机の上の舞台から矢のように消えた
保育園での演し物で披露するらしい足裏芸
美恵子は、言葉も出なかった
由美子は、双子の美恵子の姿に気付くと、ぱっと起き上がった
染めてもいないのに栗毛色の癖っ毛には沢山の紙吹雪の残骸が絡まっている)

いつの間にか画面が、ペラペラになっていきます。

ジャッキー『ちょっと休憩しようぜ』
クーピー『そうだな』

「みんな~お片づけしなさ~い」
先生の声にはっと顔を上げた双子の由美子ちゃんと美恵子ちゃんは、いっぱい楽しんだ後の惨状に困った顔をしました。
いつの間にか、ジャッキーとクーピーは、ただのペラペラな紙と由美ちゃんの足の裏に戻ってしまっていたからです。



自由詩 薄衣 Copyright 水菜 2016-10-29 03:22:46
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