校庭のふたり
葉月 祐

近所の高校の校庭を
囲む様に佇む木々達は

僕達、紅葉なんてしませんよ!

そう主張しながら
形の無い冬を目の前にして
己の緑の濃さを増しながら
その精神を保っている様だった


しかしその外周の中で
やけに大柄な木が
その身を隠す事も出来ずに
その身を黄金に染めて
ひとり 立っていた

晴れだろうが
雨だろうが
重たい雲が
視界を支配する時でも
その木は凛と立ち
その場を鮮やかに
彩っていた


ある日 外出先から
家へと向かった時
その大きな黄金の木を
違う角度から見た

驚いた事に
その木のすぐ側
隣に隠れる様に
小さな木がちょこんと
恥ずかしそうに立っていて
その小柄な木は
深紅に染まりきっていたのだ


まるでふたりが
誰にもとめられない
秘密の恋でも
しているかの様に
校庭の中で
そこだけが鮮やかだった


ふたりの性別を
私は知らないのだけれど
どちらが男で
どちらが女でも
どちらも同性だとしても

あの校庭で
ふたりだけが恋におちていて
おそらくその恋は
密かに実っているのだろう



色をひとつずつ無くし
過ぎていく季節の下で
深みを増した緑に囲まれた
大柄な黄金の木と
小柄な深紅の木


ふたりの幸せが
いつまでも続く様にと
願わずにはいられなかった







自由詩 校庭のふたり Copyright 葉月 祐 2016-10-27 10:56:25
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