彗星、家出する
日々野いずる

星と光と闇より
現実味のない宇宙遊泳
足元を掬われる前に遊び浮く
くるくると天井を知らず地も知らず
青い星からのはぐれ者
家出した散見される彗星になって
仄かな星明かり、頼りに闇を行く

あの星は誰、と指をさされ
そこらを埋め尽くした欠片
進むたびに剥がれ落ちていくのは
感情の端切れであって
それが光って消える
早く早くと飛んできたツケは
脆い表層を成し支払っている現状

行方が不明の家出人
無事の便りは長らく出さなかった
行先が不明の彗星
おずおず踏み出した一歩が
いつ何も踏みしめないで転げ落ちるか恐恐としている

周囲に満ち満ちた輝きを掬い取り
ランタンに仕立てて人に売る
わずかな小銭、ジュースを買う

夜の淵に腰掛けて
のんびり明かりをつまみつつ
ひんやりした缶の水滴
光って見える

ぽたりと膝におっこちた


自由詩 彗星、家出する Copyright 日々野いずる 2016-10-02 01:44:34
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