5or6

小さな疳の虫が鳴く頃、
庭先で裸になってた木はもう若葉をつけている。

大陸の風には白砂が舞う時があって
揺らす木々の枝にあたり
大地に落ちていく
パラパラと小さな白砂が
日向ぼっこをしている蛙の上に落ちていくのだけど
蛙はそのまま動かずに
ケロケロなのかゴロゴロなのか
どちらともいえない鳴き声で
寝ているのか寝ていないのか
わからない表情で座っている。
身体中が砂まみれになり
流石に払ってあげようと背中を触ろうとしたら
蛙はシャ、っとオシッコをしながら
草むらに飛び込んでしまった。

そして
その場所に
小さな砂浜と海が出来ているのを
僕は気付いた。

さざ波が聞こえる。
妻と子供が海岸で
おいでおいでしている。
笑顔で同じように手を振ると
いつの間にか広がる雨雲から
ポツポツと悲しみが落ちてきて
全てを洗いざらい流してしまった。
びしょ濡れのまま
部屋に戻ると
小さな蛙が部屋の中で
かえるの歌を歌っていた。
ケロケロケロケロ
その次を誘うかのように
小さな眼差しで僕を見上げる。
ケロケロケロケロ
もう一度聞こえる声に合わせて
歌う。
クワックワックワッ。
キャッッキャと赤ん坊は笑い
開いたオムツからオシッコ
がシャっと飛び出して
顔にかかった僕を見て
妻が笑う。
あなたはゴロゴロって歌うよね。
あの場所ではそう聞こえたんだ。
ここではどうなの。
きみの歌が聞きたい。

暗くなった部屋の外から
蛙の声が聞こえている。

小さな蛙がいた場所には
涙で溜まった海が広がっていた。

僕に大海なんていらない。






自由詩Copyright 5or6 2016-09-22 18:12:27
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