25mプール
青の群れ

視線を奪われた白いカーブ
狭間のプールの匂い
青かったはずの人工的な水の塊も
夏が終われば緑色になってしまう

とてもしなやかに弧を描いて
滑り落ち、そのまま飛び込んで
水しぶきが舞う

ゴーグルのした
ケースに入れてしまった
コンタクトのことを考えた

自分の都合で吐き出したことが
願えば受け入れられると
根拠なく思ってしまう浅はかさすら
季節はめぐりて、美しく色褪せ色付け
これは味だなんて言い聞かせる

思春期の恋煩いと
言ってしまえばそれだけのこと
塩素できしむ髪
布団の中でぐっと
パジャマの裾を握りしめながら
誰かのことだけ思っていた

ドラマチックに
記憶の中で改変するもんだから
思春期の記憶なんてものは
都合良くできている

水面に打ち付けられた
背中が赤く染まっていく
ぼやけた視界
記憶の塩素が目にしみたから

わたしの飛び込みは
とても綺麗だったって
あなたは言ったけれど
たぶん、たまたまあなたに
見とれていたせいだったよ

市民プールが開くのも
今日までだって

水しぶき、あの夏


自由詩 25mプール Copyright 青の群れ 2016-09-11 20:40:31
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