指すら繋げなかったっけ
吐水とり


お茶をついだらコップの中に
麦茶の出しがらがけだるく舞っていて
ああいまの俺みてぇだなって
ふと思って飲むに飲めなかったり

ふふ
ああ今年の夏もおわりかよって



むかし浴衣のあの子にあげた
ふくろづめの金魚はどうなったんだろか
あの日たしかに、俺が思うに
あいつ全生命体一のハッピーフィッシュ
ぼんやりグラス傾けたらむせた

アスファルトに散るあんず飴
踏んで駆けてく下駄履きのちょうちょ
遠くで焦げた祭囃子
残響、残響、残響



来世は鱗になろうな
あの子の金魚の鱗になろうな
秋を知る術がないから光るのさ




夏のおわり、
鱗のおわり、
浴衣のあの子は泣いたのだろうか

カーテンの向こうで
豆腐屋の笛の音




自由詩 指すら繋げなかったっけ Copyright 吐水とり 2016-09-10 17:12:02
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