エレクトーン
チグトセ

取り残されたら怖いなって
そう思うのに
いつもみんなと同じタイミングではくっつくことができずに
遊離した電荷はなるべく迷惑をかけないよう漂うしかない

伝えたいことを一つも伝えられないまま
少しずつ減っていく僕を
いっそ共通規格の電気に分解して
使ってしまってほしい
そうであれば
曇っていく眼鏡も、曲がっていく定規も
ズレていく意味合いも愛想笑いも
糧にはなるはずだろう?

暑さにうんざりする土に埋もれて
凶暴な生命力を眺めていたら
世界が滅びるのなんてウソだろって
思えてくるんだけど

いつしか君が望んでいた世界のようには
なったはずなのに
それがようやくそうらしいと明らかになった頃には
あの頃の最初の「問い」
を憶えている者は、もはや一人もいなくて

きっと膨大な拍手に埋もれて
幸せに埋葬されていったのだろう

つまり、
無垢な勘違いに圧し潰されて
本当に上書きされてしまったのだ
誰の手も届かない場所で
静かに

薄暗い部屋の壁をのぼっていく
薄っぺらい埃
結局最後まで、端から端まで使われなかった
初めから、余白だった宇宙
光が時間なんて覚えるから
こうしてなんにも、止められないのだ


自由詩 エレクトーン Copyright チグトセ 2016-06-25 13:42:52
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