ベビー
チグトセ

そんなに折れてしまいやすいのに、毎日穏当な光の前に立っていたあなたに
知らなくていいから、知ってほしいの

無名な誰かの孤独をたとえば廃墟から持ち去って
遠い向こう側の二重の世界で再生された笑い声に耳を澄まして
それでも居場所を見つけて咲こうとする雑草
ただみんな、吸って、吐き出す
手の施しようもなく、奪い、たくさんの「恥ずかしい」が降って地面のようになって
太陽みたいにあなたが泣くから
ざわざわしない、地面のようでいたいと思うんだ

少しうるさいなら、音を切ってくれてかまわないから
少し集まりすぎたなら、元に戻してくれてかまわないから
そうできるように、
簡単には千切れないものであってくれたらいいと願う

大きなズレもなく、平穏無事であって、
ただ夕方が来るみたいに、不安でもあって、
預けられた命は、あんまりにも重くって、
同時に無関係であって、
だから、
奪わないようにして奪うやり方が、穏当なだけなんだよ

そっと、手を掴んだ
誰のものでもない手を
奇跡だって
遠い向こう側の二重の世界の
あなたに


自由詩 ベビー Copyright チグトセ 2016-06-16 11:46:52
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