頬の赤らむ夜の恋唄
服部 剛

フォーク歌手があこーすてぃっくぎたあを
掻き鳴らす、ある夜のライブハウスで偶然
隣り合わせたお洒落な婆ちゃんが「じゃあ」
って店内から出てゆく、繁華街のネオンの
合間をゆっくり抜けて小さくなってゆく…
猫背を脳裏に浮かべて、ふいに、昔恋した
誰かに何故か似ていた横顔の輪郭が重なり
後からじわっと無性にお洒落な婆ちゃんが
愛しくなっちゃって僕は思わずグラスの氷
をからりん、と鳴らしてぐいと琥珀の液体
を流し込む――(そうして唄歌いの弾き語
りは夢心地のBGMになるのです)…あの
夏の日にあまりにカッコ悪くずっこけた僕
のあの娘は今頃何処でどうしているのやら。  






自由詩 頬の赤らむ夜の恋唄 Copyright 服部 剛 2016-06-13 00:19:06
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