未知の種
あおい満月

ふと、考える。
もしも私が、
あなたと同じように、
目がみえなくなってしまったら、
私は詩が書けなくなるのだろうか。
幼い頃は、
目がみえなくなることが、
とても怖かった。
怖くて怖くて、
眠れなかった。
けれど今はそれほど怖くはない。

(目だけは、守りなさい)

夜毎あなたは私の手を握りしめます。
約束は守れるか、
私にはわかりません。
守る努力をしても、
もしもの時がいつやって来るのかは
わからないから。

私にとってもっとも怖いのは、
詩が書けなくなること。
この目が潰れてしまったら、
二度とスマホやノートに書き記せない。
けれど、私には声がある。
耳がきこえる。
だから、
お母さん。
私はもしもそうなってしまったら、
今度は声で詩を描きます。

光はみえるけれど、
その光に向かうまでの道程が、
そうとう遠いのはわかります。
お母さん。
私には希望があります。
その希望をかたちにするまで、
私は諦めません。

あなたの希望が私であるように、
私にはあなたと詩が希望です。
いつかはひとりで歩いていく。
だから、
あなたがくれたことばの、
ひとつひとつをかみしめて、
誰かの心のなかに、
種を蒔きながら生きていきます。
未知を切り開くための強い種を。
私をとりまくすべてのものたちのなかに。


自由詩 未知の種 Copyright あおい満月 2016-06-07 20:32:36
notebook Home 戻る  過去 未来