シンデレラとベンジャミン
ベンジャミン

僕の名前はベンジャミン。
ある日散歩していたら、ガラスの靴をひろってしまった。
おお、まさにシンデレラストーリーな展開だ、と思って、さっそく街にくりだしてみた。あからさまにガラスの靴を掲げながら、しばらく歩いていたら、突然見知らぬ女性が目の前に立ちはだかり、ガラスの靴を僕から奪おうとするので、僕がそうはさせまいと引き戻すと、ぽきっとヒールが折れてしまった。するとシンデレラ(仮称)は急に泣き崩れてしまい、よく見ると、シンデレラの後ろにあるかぼちゃの馬車の車輪もとれて、馬は道端の草を食べることに夢中になっている。ああ、シンデレラストーリーの崩壊だあ、と天をあおいだとき、シンデレラが泣くのをやめて抱きついてきた。この展開は意外だあ、と驚いていると、シンデレラは理由を話し出した。聞いてみると、このガラスの靴には呪いがかけられていて、そのままだと、かぼちゃの馬車に乗せられて、呪いの国に連れて行かれるところだったのだという。でもガラスの靴が壊れたせいで、呪いがとけて行かなくてすみましたあ、、、らぶらぶ、ということだそうだ。なんて素晴らしい展開だあ、と感激の嵐に包まれた僕は、シンデレラを抱きかかえると夕日に向かって歩き出した。

という夢を見た朝。
僕はなんともふんわりとした気持ちで、いつものように会社へ向かう道を歩いていた。すると、なんと道端にガラスの靴を発見してしまった。僕はわくわくしながらガラスの靴を手に取ると、夢で見たように街へ繰り出した。シンデレラストーリーの始まりを予感しながら、ガラスの靴をかかげて歩く。すると、やはり同じように見知らぬ女性(仮称シンデレラ)が立ちはだかるではないか、僕はもう本当に嬉しくなって、はやる気持ちを抑えられずに、ぽきっといきなりヒールを折ってしまった。バシッ!、、、シンデレラはシンデレラらしからぬ力強さで僕を平手打ちにした。そして泣き崩れる、僕は一瞬たじろいだが、すぐにあたりを見回してかぼちゃの馬車を探したが見当たらない。しまった!!!これはやっぱりシンデレラストーリーなんかじゃなかったんだ!!!僕は愕然として、手に持ったままのガラスの靴と折ったヒールを見つめていた。(どうしよう、、、)僕が悩んでいると、いきなりシンデレラが抱きついてきた。えーー!!!僕にはもう展開がわからない。抱きつきながらシンデレラは話し始めた。聞くと、このガラスの靴は、前につきあっていた大富豪の御曹司からもらったもので、実は遊ばれていただけだったのだそうだ。けれど大富豪のお嫁さんになる夢を捨てきれずに持ち歩いていたのだが落としてしまって探していたと、でも、目の前でヒールが折られるのを見て、目が覚めました、、、夢のようなシンデレラストーリーなんて期待しちゃいけなかったんですね!って、僕は胸にひっかかるものを感じながらも、そっと抱きしめてしまった。

今日から付き合いましょうね、あたしの名前はきょーこです♪

それでも僕は、これをシンデレラストーリーだと疑わなかった。




散文(批評随筆小説等) シンデレラとベンジャミン Copyright ベンジャミン 2005-02-25 07:47:02
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