儚さで満たせばいい
ベンジャミン

煙が這っている

吸殻 だとか 灰 だとか
抜け殻 だとか カス だとか
置き去りにして
きれいに消えてみせる

そんなふうに居なくなるなんて
ずるい
ただただ ずるい
儚さだけを吸い出して
みっともない殻は自分でないなんて

かたちを変えて溶け込もうとする
何処にでも入り込んでくる
穴という穴から
出口なんてないのに

くうをつかむ手
折りたたんだ脚の三角
のどの奥に広がる闇
腹に抱えた忘れえぬ過去

この身とともに在れ
かたときも離れずに居ろ
殻にするな
みっともないまま置き去りにするな
指にからみつく髪のように
抜け出した安堵を悲しげに見せるな

手のひらの汗がとらえた光
消えかかった腕の傷
引っかいた白い痕
そのまま
この身にとどまって
もっと儚さで満たせばいい

たやすく生きるな
もっとみっともなく生きるのだ
そう在ることが
儚くて

美しい

この身から
儚さを逃がすな

満たせ

満たせ

この身とともに
消えるまで







自由詩 儚さで満たせばいい Copyright ベンジャミン 2005-02-25 06:46:04
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