ポケットにあるのはポケット以外の全部
竜門勇気


彼らの声を聞いていた
夢みたいだ
夢だった

僕の顔には唾が引っ掛けられて
薄ら笑いだけしか持ち物がなかった
うまくやったつもりで
声は遠ざかる

誰かが今死んだね
ささやき合って墓場で目を覚ます

彼らは鍵を閉めて
夢を見ていた
僕と同じやつだ

僕は何度かうちのめされた後みたいだ
薄ら笑いが見つからない
暗いポケットを探してる間に
どこかでエンドロールが始まる

彼らは夢を
手に入れて
どこかへ歩き始めてる

誰かはここにいなくちゃね
手を挙げて
まるで孤独を選んだような顔をした

星を道標に
あるいてきた
それはなんて心もとない冒険だったんだろう
惑星に寄りかかって
銀河ごと迷ってる

星に逃げた僕は
6月の星座盤をクリスマスに見てた
夏を待って夜は
部屋の窓まで指をのばした

7月 8月
9月 ゆっくり回す
未来の僕に同情しながら
十字に星を繋いで

10月 11月
12月 回してねだる
今日にその強さを
十字を星に課して

彼らの声は聞こえる
僕は喋るのを辞めていた
いくらでも湧いて出る薄ら笑いが
ポケットの中で飴玉になって
からりころり音を立てて
砕けるまでの時間を味わってる



自由詩 ポケットにあるのはポケット以外の全部 Copyright 竜門勇気 2016-04-23 12:15:34
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