フィギャーノートは使わない
板谷みきょう

フィギャーノート創始者の
マルックとカールロに会った2006年

彼らは「北方派五分楽団」の演奏を観て
指導者が素晴らしいとコメントしたけど
ボクが指導者だと知った時に
信じられないという表情を浮かべた
「でも、フィギャーノートを使えば
もっと素晴らしくなる。」と
通訳者の女性は言ったのだったものだ

数年前
フィンランドから障碍者の音楽グループが来て
演奏会を開催するというニュースを見たボクは
前日に某ホテルで
歓迎パーティーが開催される情報を得た

当時、国際交流のアトラクションの衣装は
波柄の長はっぴに手甲腹掛けで
今でいうよさこいソーランの衣装みたい
狐面を頭に付けて
ギター片手に唄っていたボクは
そのホテルへ行き
トイレ内でステージ衣装に着替えて
時間を見計らって
歓迎レセプション会場入口に身を潜めた

開会挨拶から続く挨拶に挨拶の後に
司会者が言った
「暫くの間、ご歓談下さい。」
その言葉を切っ掛けに会場に乱入し
ステージに上がって
ステージ前の関係者席に座ってる
スーツ姿の唖然とした顔を見ながら

「ようこそ初めまして
板谷みきょうと申します。」
そう言うと直ぐ一曲歌い始めて
歌い終わると
「有難うございました。」と一礼して
"唄い逃げ"
会場出口に向かって走った

ホテルの廊下に出ると
衣装替えに
トイレに向かい走ったのだったが
後を追われていることに気付き
トイレに着く前に
捕まってしまった

無断で乱入放歌したことを叱られるか
最悪、警備員に突き出されるか

走ったことと
捕まったことで心臓は
バクバクしていた

取り敢えず
「すいません。」と謝ったのだが
青い波模様の着物をたおして作ったコートに
狐面を頭に乗せてギターを抱えたまま
会場に連れ戻されてしまった

席を用意されてテーブルに着かされ
フィンランドから来た障碍者の
音楽グループメンバーを紹介される

参列した招待客から
関係者が仕込んだサプライズの余興だと
勘違いされ参列者も大盛り上がりとなり
フィンランドから来たメンバー達が
大喜びだったことを説明され
閉会までボクまでが歓迎されたのだった


自由詩 フィギャーノートは使わない Copyright 板谷みきょう 2016-04-17 23:47:28
notebook Home 戻る  過去 未来