しぼむ
岡村明子

何度ささやいたかわからない
あいしている
のうち
一度だけは
「哀している」
と言ったのだ
きみは気づかないが

かなしもまた愛し
あいしもまた哀し

きみが肩に頭をのせているあいだ
花瓶の大きな百合の花が
くったりとしおれていったのだ

私の眼は乾燥して
まばたきするたび
かちかちと音がした

あいしている
と聞かれたから
答えたのだ

きみの脳がどう咀嚼していようと
私はたしかに
哀していた

私の貧弱な肩に
きみの頭は重すぎたんだ


自由詩 しぼむ Copyright 岡村明子 2003-11-12 02:15:01
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