十代の腐臭
うみこ

僕がいくら部屋に閉じこもって
この部屋の空気を濁したって
窓を開けた先の空気は澄んでいる
そういうものだよね
いくら夏の砂つぶを挟んだままのサンダルを
玄関に置いていたって
誰も僕を連れ出してはくれない
痣ができるほど

痣ができるほど
僕の手を握ってくれる人はいなかった
胸の中に
鎖があって
両端を引っ張って
何度も輪っかをぶつけたけれど
ちぎれない
そういうものだよね

誰のせいにもできない
僕のものは
僕が背負うべきものだから
分けることはできないよ
ごめんね

胸を締め付ける
触れない
僕のもの
情けないものが
溢れているよ
母さん
助けて、助けて、

今日は玄関の鍵を
しめ忘すれて眠った

7月15日、これは雨じゃなかったし
夢でもなかった









なのに
玄関のブザーは何度もなっていた
どうしてだと思う?
ねぇどうしてなんだと思う?
わからないよ僕には
ぜんぜん
わからないから

覚めるまで
どれくらいか
わからない夜を
更新して、
更新して、
日めくりカレンダーを
破ってぶっ飛ばして
来年の4月まで引き千切ったから
それまでには立ち直るから
ごめんな母さん
それまでには立ち直るから、


十代の
十は
十字架の
十だった
地面に
突っ立ってるやつを
引っこ抜いて背負って歩いてる
キリストみたく
裸足ではなく
汚れたスニーカーで
登坂する
砂利道
アスファルト
コンクリート



爪を切った
少しずつ
爪切りがあった
兄の
灰皿の横に
ごめんな母さん
僕は立ち直るから
きっと立ち直るから、


誰かの十字架が
倒れてた


僕のものは
僕が背負うべきものだから
分けてあげられないよ
ごめんね
それはつまり
僕は
僕の十字架を背負うので精一杯だから
君のこと
起こしてあげられないってことなんだ
ごめんね
ごめんね
ごめんね、


十代の
十は
十字架の
十だった
地面に
突っ立ってたやつを
引っこ抜いて背負って歩いてる
キリストみたく
裸足ではなく
汚れたスニーカーで
登坂する
砂利道
アスファルト
コンクリート



君が
白線にも負けない白い顔をして倒れていた
髪の毛は
その白さの上に幾つかの束を作ってへばりついていた


朝へ続く道
爪を切った足
シャツを通過する温もり
すぐ近くで聞こえる静寂
冷たい湿度



力の抜けた指先
放心する朝日
朝なのに
夕焼けみたいな色の中に伸びた僕の影

うつらない十字架
祝福されない
重い計り



最近見た映画
よりもなんだか
















自由詩 十代の腐臭 Copyright うみこ 2016-03-27 02:20:12
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