【Paradox Japan】(パラドックス・ジャパン)
るるりら


かつて 大本営のあった場所は晴天なり
銀のフォークの並ぶ部屋から見下ろせば
ゆっくりと雲は 流れる
ナイルの川ほどではないにしろ ゆたかな水が輝いて

四方形の掘の水が かつて権威のあった場所を清めている 
熱線と血の匂いに焼き尽くされた場所を 
おぼえているのか同席の彼女は九十歳をまじかにしていても
童女のように ころころと笑っている

膝に自分の骨を粉にしたものを材料にしたものを埋め込んだのだという
毎週プールに通い 毎日五キロは歩く九十歳の童女の澄んだ声
かつてこの地に血達磨の人々が 犇めいていたことも 忘れてはいないはず

眼下には浪々と 大河
スフィクスのような医者なら
人生の朝には四本足で
昼は二本足
夜では三本足と 答えるだろうね

彼女は くくくと笑う
杖を使おうとすると 杖をつくリズムが解らないのよ
杖って普通の足だと杖をつくタイミングが解らないのよお


ちいさな袋の中には
いろんな亡くなり方をした家族の写真
核をしらずに広島入りして亡くなった方も 兵隊の姿のまま
彼女の足取りは 二本足
からだごとなくした人々といっしょに 二本足で歩いている
日本もまだ 二本足で 歩いている

********
前に、メビウスリングの企画で書いたものを推敲しました。
【Paradox Japan】(パラドックス・ジャパン)という題名で詩を書こうという企画でした。ですが、Paradoxの使い方に自信がないので、この詩は合っているのかを どなたか
教えてくださいませ。


自由詩 【Paradox Japan】(パラドックス・ジャパン) Copyright るるりら 2016-03-22 18:48:50
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
Democratic Poems