唐突に夜空がぼやけて見える
noman

誰もいない中庭で
ときどき降り積もった雪が舞い
上がっていた
隅の方に穿たれた 小さな
穴の中では
随分前に置き忘れられた憎悪が腐りかけて
いる
行く宛を見つけるのは
そう難しくないのに
どこに
手を伸ばせばいいのかは 手がかり
すら見つからない

黒く滑らかな水滴に囲まれた街灯の下
手にしていた布はいつの
間にかすっかり乾いて
奪われた熱の分
過去も未来も軽くなった
雨の中どこからか
群がって来た人々の
服の色や
話し方や
視線の方向などのひとつひとつが
軽やかに飛び回る羽虫のように
雨粒の隙間を潜り抜け
どこかで収束されることを夢
見ているような気がしたが
多分気のせいだろう


自由詩 唐突に夜空がぼやけて見える Copyright noman 2016-02-07 23:25:10
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