地図
あおい満月
脳髄の奥底で、
渦巻く怒りに似たことばは、
構築を知らぬまま
進むべき道の足跡ばかり探る。
*
机の上に仮面が置かれている。
仮面は口元をカッターでなぞられたように
笑っている。
誰かが私の脇を通りすぎて、
私は仮面を見られまいとして
引き出しにしまいこんだ。
私の足元で、
からからからから、
仮面の笑い声が聴こえる。
私は耳をふさいで、
一直線に引かれた地図の上を
曲がりながら歩く。
**
人は何故、
ないものについて拘るのか。
母親はいつも指折り数えながら、
架空の夢を差し引きする。
そうして残った鶏の骨ばかりを、
くしゃみにして、
娘の髪にふきかけてくる。
娘はただただ、
暖かい部屋でコートを着たまま、
身構えている。
ただひとつ、
確信めいたを想いを
石のように握って。
***
握りしめた人は、
私の濃厚な手相の海で
やじろべえになっている。
好きなものがある。
手には入らないけれど、
とても大事なもの。
それを知った小さな娘は、
ゆめのなかで、
何度もあのあたたかな身体を抱きしめている。
時計回り、 反時計回りで
あの人の背中を追いかけながら。