ラルゴ
レモン

しづかに濾過してゆく月明かり
夢遊病者の溜息みたいに青白く
呼吸がふるえる

澄んだ夜の、 おと。

寝息に上下する胸を意識しながら、
台所の蛇口
水滴が
もりあがり、もりあがり、落下する様
もどかしく、
不思議に安らかだと。


((陽炎のような?
いいえ、もっと緩慢な
満ちてくる
或いは止まっている
時間ですか?
そう、とても。))


それは永遠だ。
という
錯覚(或いは真実)

静止した くう の中
いつまでも自由でいられるような

その一瞬を。


大気を浸食しながら
確実に凝縮する
ただ一点。

何かに導かれるように羽撃き
限りなく光に近づきつつ総ては其の場所に収束するのだ、
と。



そして私は、死を想う


自由詩 ラルゴ Copyright レモン 2015-11-19 22:42:19
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