僕の切り取った人物
溶融

ダブルの電車が通り過ぎた後
遮断機が上がり始め
僕は右足から前へ踏み出した

触れそうな肩先をすり抜ける術が
この身につき始め
早足な街の演者の一人となる


蟻の行列みたいな人波
ビルの上空から眺めてる
流れる雲は何を想うのだろう


履き違えたスニーカーは
近所のディスカウントの
商品棚に整列し



切れ端の言葉を放つ人達が
地べたに陣取った
笑えない冗談みたいな
暮らしにまみれたこの街




空から舞い落ちる紙くずに
手をのばす男の横顔を
画用紙に切り取ったのは
15の時



その男はいったい
何をつかもうと
必死に生きたのか
この手にあるのは
残された言葉と
銀色のドーナツだけ
銀色のドーナツだけ


自由詩 僕の切り取った人物 Copyright 溶融 2015-08-27 13:29:26
notebook Home 戻る  過去 未来