通りゃんせ
秋也

「警告入るな」
木製立札のみ
ややペンキの匂いあり
鎖やテープで行く手を封鎖することなく
先はただ砂まみれ
やや起伏
何を阻むのか
私の身の安全か
あなたの安息への侵害か
大層な宝なんてあるはずもなく
やや困り
立ち尽くす
瞬き
大音量交通量雑踏から
スクランブル交差点
隣の仲良し女子高生二人
前に建つビル群の隙間
指さして
「ほら夕焼け綺麗だよね」
「本当だ。あ、信号変わった行こう」
「私夕焼けで雲の色変わるの好き」
聴覚障がい者に歩行可能を知らせる電子音がメロディを歌う
私も立札を無視し砂を踏みしめ
前へ進む
「この先進むべからず」でもよかったな
会心の独り言
夕焼けはあなただけでなく誰が見ても美しい
赤さと寂しさと不安感に気づけば誰でもウェルカムなのさ
「夕焼け夕暮れ夕刻独り占め禁止」
交差点のド真ん中に立札生やすべし
チタン製が好ましい
ぴぴぴぴと電子音で警告
人々渡りきれと
赤から闇へともうすぐ夜が始まるから


自由詩 通りゃんせ Copyright 秋也 2015-06-25 00:42:26
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