クルックドゥー!糞尿死から飛びたて!
瓜田タカヤ


女とキスした。
俺は鳩のことを考えた。

俺は鳩料理と言うものを食べたことがないのだが
この世に、鳩料理は結構メジャーに存在しているのであるらしい。

俺が平和公園の鳩の一羽になったとして、青森で鳩料理を出す店屋の
主人が、どうしても鳩が一羽足りなくて、平和公園でつかまった食われる鳩
俺は鳩だから、意識はそう深いところに根ざしていないであろう。
いやむしろ
浅ければ浅いほど、この世の真理の表層の一部を担っているのかもしれぬ。

俺はその主人の店へ連れて行かれる中古車の中で
いつもと違う環境下に置かれていることを感じ取る。

太陽の日差しが高らかに降り注がれる。それは
うそ臭い未来の化学兵器のように、
鳩の羽を照らし、肉の温度を上げる。
俺はペニスをつきたて、メスの鳩を探す。
意味はない。

遮断された部屋でつかまっている。
誰かがやってくる。それは主人だ、主人は中年の男であるのだが
ラメのビチビチに締め付けられた女性用の水着を着込んでいる。

彼は「アハアハアハアハアハアハアハアハ!」と
真剣に唄いこんでいる。俺は名前をつぶやくが
鳩だから意味がわからない。

俺は肛門に巨大なアナを開けられる。
おじさんは勃起したペニスを突き立てる。
しばらく前後に激しくゆすられ、俺は何度も切れ気味に
「クルックドゥウ!クルックドゥウ!クルックドゥウ!」と鳴いた。
おじさんは直ぐに逝き、俺の磨耗した内部の肉がぬるい液体で強く湿った。

おじさんは舌打ちをし、「コレじゃないか」と言った。
まるでそれは、
自分の初めの目的とは違うことに使用してしまったけれども
料理用に鳩を弄繰り回した挙句に、決断した言葉であるかのような
一人言い訳ゲームのようであった。

おじさんに子供はいない。正確には、いたのだが死んだのだ。
子供が三歳にのときに、汲み取り式便所で糞尿を排泄していた子供は
誤って落ちてしまった。そして糞尿にまみれてしんだのである。

それからこのおじさんと妻は、悲しい我が子の事故死を、
もう二度と繰り返さぬために
汲み取り便所を無くす会「ノーボットンの会」を結成し
インターネットのhpや
全国の小学校や老人ホームを、行き交い講演を行うのである。

彼は我が子が死ぬ前までは、気の弱いだめな男であり、
どちらかと言うと人生の敗北者であり、彼自身も
そう思っていたのであるが子供が糞にまみれて死んでから変わったのだ。

子供が死んだという事実は彼を変えるためには十分な理由であったろう。

そして彼は思っていた。子供が死ねば、みんなが同情してくれる。
みんなが僕の話を聞いてくれる。みんながノーボットンに金をほぼ募金してくれる。
私を中心にさまざまな事柄を進められると思った。糞まみれの子供万歳と思っていた。

人はさまざまな瞬間、変わる時がある。それは一本の映画であったり、
どこか遠い旅路の果てであったり、死ぬほど追い詰められた瞬間であったり
極限の戦いの末であったりするのだが、彼の場合は子が糞まみれで死んだ事であったのだ。

一度ボットンの会のメンバー数人と、山へ行った時のことであった。

山林に建つトイレが汲み取り式であったのだ。
彼はそれを見て、会員もいる手前怒らなくちゃいけないなあ。と思い、
責任者は誰だ!と騒いだ。

そこへ、熊をも殺せそうな山男チックな30代であろう柄の悪い男が
現れて、俺が責任者だと言う。
彼は会員のいる手前引っ込みがつかないので言った。

「お前は死ね!」
一瞬30代の男は何をいってるんだこの男は と言う顔をし、その後直ぐに
こいつは多分キチガイである。と断定した表情をみせた。

彼はあせった。喧嘩になれば私は負ける。そして私は謝るだろう。
いやその前に、殴られそうな空気になったら、
私は直ぐに謝ってしまうだろう。

攻撃するのなら、まだその雰囲気にさえもなっていない今だ。
彼はハッタリ覚悟で、本当は近づくのも怖かった年下の30代男に近づき
余裕を持ったような調子でしゃべった。

「君は結婚しているのかい?子供はいるの?」
相手は黙って彼を睨んでいた。

彼は続けて言った。

「私の子供はねえ、3歳で死にました。窒息死ですよ。
 それはもう可愛い子でした。男とか女とかまあ、いいでしょう。
 そんなこと
 一緒にひな祭りをしたり、いやそんな特別なイベントとかは関係ないんですよ
 それよりも、普通に一緒にただすごす日々が懐かしいのですよ。
 すばらしい日々だ!った。
 死んだんですよ。うちの子供はねえ。
 一緒にご飯を食べたり、喧嘩して少し子供が血を流してしまって、
 医者に連れて行った時とか、転んだって医者に言え!って子供に言ったら、
 ちゃんとそう言ってくれた りしてねえ。本当に可愛い子供でした。
 それがぜーんぶ無。
 ナッシングになっちゃったんですよねえ。・・・。
 私の子供は、汲み取り式の便所に落ちて、
 死んだんですよ!その気持ちが・・。
 その気持ちが親でもないあなたには、解るはずもないでしょう?!」
 
30代の男が、俺は子供のいる親だ。と言い終わるかの時に

「私の子供の親じゃないダロ!!あんたは!私に死んだ子供の親じゃないだろ!
 私達はね。そんな子供を二度と出したくないと思って、
 このノーボットンの会を結成したんですよ。会長は私で。
 今会員は6名ですよ!この前までは7名だったんですがね。
 会員集めのために、こういう何もない山とかに来て
 親睦を深めたりしているんですよ。
 一人なんで抜けたかってねえ。
 私は会員を集めるために食事会を開こうとしたんですよ。

 その時に私の子供は処女のまま死んだからね。
 レモンと名付けた催し物を
 やろうと思ったんですよ。
 会員の室藤さん女50歳のかたなんですけどねえ。

 彼女の上半身を裸にするんですよ。そして彼女の娘も呼ぶのですよ。
 そしてステージの後ろから上半身裸の娘が現れるんですよ。

 室藤親子がステージで上半身裸なんですよ!
 奥さんの方は娘が現れた時に、びっくりしてもらいます。
 スター物まね王座決定戦とかで、後から本物が現れてびっくりって
 挙動する物まねのやつらいるでしょう。そんな感じでね。

 でも室藤奥さんには、前もって話しておきますよ。
 そうしないと誘拐になっちゃうからねえ。
 そのステージの上で、そこで室藤親子は乳首と乳首を触れ合わせるわけですよ!
 その時、私がステージの真ん中から現れるんですよ。
 そして彼女らの少し立ってきた乳首に、レモンを絞ってかけるわけですよ。

 彼女達の両方の乳首にね、
 私は右手と左手にそれぞれ半分に切ったレモンを握って、同時に絞り込むのですよ。
 
 そこで音楽が流れてくるのです。

 娘の好きだった曲、ハヤテのようにザブングル の曲がねえ!

 私はもちろん上半身裸で、緑色に体は塗っています。
 目の部分は黄色にします。ザブングルが娘が好きだったからね。
 そして会員みんなでさびの部分替え歌で大合唱するのです、

 ほかの会員はみんな裸です。肌の色は青です。全部。
 
 歌詞は、娘は飲むよー。レモン汁。犬よりも!ってね。
 それをやるために室藤さんの娘さんをぜひとも説得させるために、
 今夜私の家の近くの公園に彼女を一人でよこしなさい。
 できるだけ体にぴったりと張り付く服を着て。
 と言ったんですよ。そしたら室藤さんはね。もうね・・。」

と言って彼は会員の方に目をやった。
会員の一人、借金まみれのさえない男は、娘さんさえ来てくれればねえ。
本当に残念でしたねえ。室藤さんは、偽善者ですよねえ。と言い
完全に娘の体を好きなように会員達で触りまくれるチャンスを
無くしたことだけを後悔していた。

クルックドゥー!

彼の冴えない喫茶店にて開催された、
ノーボットン食事会にて俺は首だけになり
皿の上に盛られた。

みんなで談笑している時に俺は、鳴いてみようかと思った。
もちろん死んでいるわけだし、
俺は鳩だからそんな事考えられないんだけど
そうしたかったので、場が和んでいる時に鳴いてみた。

「クル・・」そのとたん、彼の手がすばやく俺の口を押さえた。
彼は俺の口を押さえたまま、
ノーボットンの会員をいかにして増やしていくか
の話を熱っぽく語っていた。彼は言った。

「みんな服を脱いで!」
そして鳩の首を会員達の股間に装着させて、
ドアを開けて外へ何秒出ていられるかを
競うべきだ。と言った。

彼は鳩の俺の口ばしを押さえたまま、
会員達がビびりながら外へ出、
そして帰って来る光景を眺めていた。

彼と彼らは嫌々そうに、しかし子供の命を救うという大義名分のためか
どこか誇らしげに、それを行っていた。

俺は口ばしを振り、彼に叫んだ。
「クルックウ!!(このキチガイ!)」

彼は俺を見ずに、自分も参加しようかと、服を脱ぎ始めた。

彼は、裸で、
股間に鳩の生首を装着している姿を見られるかも知れない事を考えて
羞恥と快楽への期待感で顔が赤く興奮していた。

それは、まるで
この
クソまみれの世界で

窒息しそうな子供に見えた。

鳩は糞まみれの世界で、窒息死した。
太陽
黄身の巨大が粘つく午後

俺は、彼の股間に装着され昼間の町へと飛び出した。

「クルックー!クルックー!クルックー!クルックー!
 クルックー!ドゥー!!」




自由詩 クルックドゥー!糞尿死から飛びたて! Copyright 瓜田タカヤ 2005-02-11 02:41:30
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