疑心
ヒヤシンス

 雨音がすべての音を掻き消していた。
 この町に人はまばらだが、誰もが何か特別なことが起きるのを待っていた。
 不謹慎極まりない人々なのだ。
 小さな町では誰もが監視されている。

 
 雨音が徐々に強くなる。
 風がないのは幸いだ。
 水滴は人々の心に浸透し、誰もが用心深くなる。
 小さな町では自由がないのだ。

 人の優しさが見えなくなるときがある。
 優しさって何だろう。
 優しさを纏った無関心が往来を闊歩している。

 雨だれがすべての嘘を浮き彫りにしてゆく。
 噂話が一人歩きしている。
 今日もどこかで罪のない人が傷ついてゆく。


自由詩 疑心 Copyright ヒヤシンス 2015-06-20 03:36:15
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