雨間
春日線香

雨が降るたびに気温が上がっていく
ベランダでシャツが風に吹かれて
夜までそのままでいる

0時を過ぎてようやく
ロビーの郵便受けを確認する
区報
ダイレクトメール
それらをまとめてポリバケツに捨てる
管理室の小窓に観葉植物の鉢が置いてあり
少し萎れている

歩きながら
合評会に持ち寄る詩のことを考える
(この詩のことだ)
何度か書いては消し
どうしても気に入らなくて
締め切りを間近に
スーパーの角を折れる
こんな風に悩むポーズだけで
行を進めてもいいけれど

信号の黄色い点滅
白線以外を踏むと
地獄行き

道なりに環状線のほうに出て
レストランの前を通る
「心を込めて準備中」
深夜は営業していないので
通りに面した大窓から
店内が見渡せる
がらんとした店内が
向かいの自動販売機の明かりで
どこまでも見渡せるが

座席にぎっしりの人影が
不審そうにこちらを振り向く

などということを考えつつ
都合のいい幻は見えてこない
見えないが
彼らのほうはこちらをじっと見ている
のかもしれず
水滴はゆるやかにガラスを伝って

かすかに小雨が降る中
丑三つ時まで客足の絶えない
ラーメン屋に入ろうとして
やめて
コンビニでコーヒーを買おうとして
それもやめて

朝方にはまた本降りになる
窓がさっと開き
腕がシャツをつかんで
窓を閉める
じっと見ている


自由詩 雨間 Copyright 春日線香 2015-05-30 22:42:55
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