SENTIMENTAL COUPDETAT
本木はじめ

空中に放り投げたる自転車の車輪の下の花びらが好き


背景として描かれる枯野にてかんざし拾うそれはゆうやけ


水没す古代遺跡の燭台にふたたび炎が灯る邂逅


風邪薬ばらまく園児裏山の伐採されし切り株の上


ヴェニスから流れ着いたよ一艘のカヌーあなたの岸辺もとめて


星もない夜空を円で切り抜いて湖底へ沈むあなたのゆびわ


黒蝶を燃やして遊ぶ少年の微笑み一瞬間の喪失


比喩とゆう意味はわかっているつもり砂の古城に土砂降りの恋


海岸線ゆっくり沈むぼくたちはそしてふたたびふたつの点へ


過食した時間を吐き出す術を知る少女は季節の外側にいる


ブランコのチェーン壊れて空中の最も高いところですじんせい


停滞す冬の曇天生きることとは変わることなの冷めた珈琲


坂道は暑さを喚起させるけど滑るまもなく過ぐるひとびと


のんびりと仔猫になって惰眠する魚雷は進む彼の国の海


一時間で煙草ひとはこ開けたあとあとに残ったわたしの呼吸


腕が折れ真逆に曲がりしなやかにせつなく交わすそんなさよなら


まぼろしをほろぼしなさい嵐の夜みぎもひだりもうしないなさい








短歌 SENTIMENTAL COUPDETAT Copyright 本木はじめ 2005-02-07 20:06:52
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